1) The Five Bookについて
長く読み継がれている古典には、視界を開かされる鋭い視点が提示されていることや、読者の琴線に触れる言葉が散りばめられていること、現代でも重要さを全く失わない問題が提議されていることがあります。当たり前だと思っていたことをもう一度考え直すきっかけになったり、新たな考えが生まれたりすることも多いのではないでしょうか。一方で、古典には、用語や文脈・歴史背景の理解が不足していると理解できない箇所があることや、言い回しや論理構造の難解な箇所も多く、読み解くのに苦労することが多いのも確かです。また、周りに同じ本を読んでいる人を見つけるのが難しいこともあり、どうしても一人でその本と格闘することになってしまいます。
The Five Booksは、これまで古典を読み解いてきた専門家の講義を受け、理解の壁を乗り越えること、他の読者や自分自身と対話しながらじっくりと読みこみ、古典の読書をより豊かな体験に変えていくことを目指しています。
2) サービスの特徴
各々のペースで古典を読み進め、週に一度のライブ講義を受ける、というのが基本的な流れになります。開講期間中は、Slackの期間限定の読者グループへ参加します。他の読者と疑問点を共有したり、講師からの問いについて読者同士で考えを共有・議論する中で、読みながら考える、考えてまた読む、という読書を行って頂きます。
The Five Booksの詳細は公式ウェブサイトをご参照ください。
3) 本講義の内容
講義の概要ドイツの哲学者アルトゥール・ショウペンハウエル(Arthur Schopenhauer, 1788-1860)晩年の著作、『パレルガ・ウント・パラリポーメナ』(1851年)の一部である『読書について』(岩波文庫、1960年初版)を三週間で読みます。 岩波文庫の『読書について』には、「思索」、「著作と文体」、「読書について」の三篇が収録されています。本講義においては、より理解のしやすい順番を考慮して、まずは「読書について」から読み始めていきます。
さて、2020年を迎えたいま、なぜこれほど昔の本を読む必要があるのでしょうか? その理由は、非常に簡潔に述べるならば、「〈新しいこと〉が書いてあるから」と言えるでしょう。『読書について』という本は、端的に「読書」について書いてある本なのですが、ショウペンハウエルが「読書」(さらには「読者」や「作者」)に対して示す洞察は――驚くべきことに――現代においても全くその輝きを失っておりません。
私たちは小さい頃から「本を読みなさい」と言われます。ですが、ショウペンハウエル曰く、「単にたくさんの本を読んでいればいい」というわけではないのです(!)。それでは、私たちはいかにして、〈真の知性〉を獲得することができるのでしょうか? さらに、(偏差値では決して測れない)本当の意味での〈賢さ〉とは、いったい何なのでしょうか? 本講義においては、『読書について』という著作を熟読することを通して、今後の人生をより豊かにするための〈読書法〉‐〈思考法〉を、受講者の皆さまに提示したいと思います。
各講義の内容
第一回(9月5日) 10:00 - 11:30
まず『読書について』を著したアルトゥール・ショウペンハウエルの経歴、および『パレルガ・ウント・パラリポーメナ』の位置づけに関して説明をします。さらに、これから「読書」について考えていくためにも、まずは〈そもそも「頭が良い」とは何か?〉という問いを考えていきたいと思います。 また、実際に『読書について』を読み進めていくに際に〈意識すべき点〉、〈押さえておくべき点〉などを指摘し、受講者の方々への〈道しるべ〉を提示したいと思います。そこで、『読書について』のみならず、哲学書全般を読み進めていくときに必須となる「批判的読解」という方法に関して、解説をしていきたいと思います。
第二回(9月12日) 10:00 - 11:30
「読書について」の範囲の講義を行います。まずは、受講者の方々がSlackに投稿した論点や疑問点を踏まえたうえで、今回の講読範囲の議論の要点をまとめます。 さらに、批判的読解をするうえで見逃すことのできない次の二つの論点を提示して、受講者の皆さまと議論を深めたいと思います。その論点とは、「可能性」(130頁)および「古典」(139頁)をめぐるものです。
第三回(9月19日) 10:00 - 11:30
「思索」の範囲の講義を行います。まずは、受講者の方々がSlackに投稿した論点や疑問点を踏まえたうえで、今回の講読範囲の議論の要点をまとめます。 さらに、批判的読解をするうえで見逃すことのできない二つの論点を提示して、受講者の皆さまと議論を深めたいと思います。その論点とは、「世界という書物」(8-9頁)および「思想体系」(12頁)をめぐるものです。
第四回(9月26日) 10:00 - 11:30
「著作と文体」の範囲の講義を行います。まずは、受講者の方々がSlackに投稿した論点や疑問点を踏まえたうえで、今回の講読範囲の議論の要点をまとめます。 さらに、批判的読解をするうえで見逃すことのできない二つの論点を提示して、受講者の皆さまと議論を深めたいと思います。その論点とは、「形式的能力」(38頁)および「幼児」(39頁)をめぐるものです。
4) 講師からのメッセージ
私は大学時代に『読書について』を読んだことをきっかけに、哲学の世界へと足を踏み入れました。それ以降、数多くの哲学書を読破することを通して、「批判的読解力」や「論理的思考力」を獲得してきたのですが、今回の講義では、私が東京大学で体得した〈読書の方法〉および〈思考の方法〉を、受講者の皆さまにご提示したいと思います。
「これまで一冊も哲学書を読んだ経験がありません!」という方でも大丈夫です。〈メタ思考能力〉を向上させたいすべての方(中高生・社会人・シニア世代の方)のご参加を、心よりお待ちしております。
5) 注意事項
・書籍は、各自でご用意願います。
・「読書について」は、光文社、岩波書店から発刊されていますが、どちらを読んでいただいても構いません。
・講義にはWeb会議サービスのZoomを使用いたします。
・各講義は、録画のうえ参加者へ講義後に共有いたします。
・受講期間の対話ツールには、Slackを使用いたします。
・Zoom, Slack共に、本名またはニックネームでご参加いただけます。
・参加申込期限は、9月3日となります。また、申込定員に達し次第受付を締め切らせて頂きます。
・その他のお問い合わせについては、トップページのお問い合わせ欄よりご連絡いただきますようお願い致します。